AIは空気が読めない
最近、「AIを使いこなしたい」という相談をよく受ける。多くの人が、ググる代わりに使ったり、簡単な文章作成には利用しているようだが、そこから先に進もうと思っても上手く使えないという話だ。
そんな相談をきっかけに、そもそも「AIを使いこなす」とはどういうことなのか考えてみた。
もう1つ先のレベルを考えてみる
ITコーディネータという立場上、経営者からAI活用の質問をいただくことがある。これまでは、主にテクニック的な観点で『契約書のチェック』や『補助金申請の資料作成』に使うと良いなどと答えてきた。けれどこれも、ググる代わりや文章作成に使うケースと大差なく、AIを使いこなすとは言えなさそうだ。
高度なAIの使い方は数多く開発されているが、非エンジニアにはハードルが高いことも多いので、ここではググる・文章作成に使うところから一歩進んで “AIに自社に合わせた仕事をしてもらう” ことを考えてみたい。人間に頼むのに近い感覚で、AIに自分の仕事を1つでも任せられれば「AIを使いこなす」ことに近づけるはずだ。
空気が読めないAI
いざ試してみると、これが簡単ではないことがわかる。
部下や後輩に指示する場合と同じ感覚でAIに指示しても、思うような結果は出にくい。人間に頼めばそれなりの結果が返ってくる指示でも、相手がAIだと的外れな結果が出ることも多い。
しかし、だからAIが “使えない” と考えるのは早計だ。人間とAIには大きな違いがある。
まず人間は、その場にいるだけで、目や耳から自然と情報が入ってくる。周囲の会話から会社の状況を把握し、誰が・いつ・何をしているか、何となく把握していることがある。特別に意識しなくても、自然と拾える情報は少なくない。
一方AIには、それができない。感覚器官がないので、こちらが渡した情報しか受け取れない。
つまり、AIは空気が読めない。
これまで「空気を読む」という言葉は「場の雰囲気を察する」ことの比喩として使われてきた。しかしAIを相手にしてみると、もっと素朴に捉え直すこともできそうだ。空気とは、その場に自然と立ち上がってくる “情報” だ。人間はそれを、自然と拾っている。
AIには、それを感じ取る器官そのものがない。なので文字通り『空気が読めない』のだ。
知るべきことは、2つに分かれる
以上を前提に、今回想定しているレベルで「AIを使いこなす」ためには2つのことを知らなければいけない。
- AI自体について:AIは何ができて、何が苦手か
- AIに何を伝えるべきか:以前よく語られていた「プロンプト(指示文)の書き方」より、中身の方が大事
2点目は、さらに分けられる。
- コンテクスト(文脈): 業界や業種、会社や部署など、その環境にいる人間が自然に把握しているもの
- 具体的な指示: コンテクストを前提として頼みたい具体的な仕事
人間に仕事を頼む時はコンテクストを伝える必要がないことも多い。日々のやりとりを通じて、前提が共有されているからだ。一方のAIには、それを意識して渡してあげる必要がある。
なぜ、伝えるのが難しいか
コンテクストも具体的な指示も、伝えるのはなかなか難しい。
そもそも、これまで人間に頼む場合はコンテクストお互いに共有していることが多かったので、改めて言葉にする機会がこれまでなかった。
そのうえで、いざ言葉にしようとすると、2つの壁にぶつかる。
- コンテクストの形式知化: 職場の中で自分がなんとなく分かっていることを、改めて言葉にするのは、誰にとっても難しい
- タスクの形式知化: 経営者から現場担当者まで、自分の業務を自覚的に取り出して言葉にできる人は、ほぼいない
さらに、AIに情報を渡すときは、ストーリーで語るよりも、構造化した形で渡したほうが伝わりやすく、使い回しもきく。けれど逆に人間にはストーリーで語り、理解する方がなじむ。このギャップも難易度を上げる原因の1つになっている。
結局、AIに人間の仕事を任せるためには、コンテキストと自分の仕事を、自覚的に言語化する必要がある。
言語化をAIに手伝ってもらう
言語化が難しいと感じる場合は、AIに手伝ってもらえば良い。
使うAIは何でも良いので「自社のコンテクストを整理したい」と伝えてみる。すると質問が返ってくる。事業内容、ターゲット顧客、業務の流れ、等。問いに答えていくうちに、自分の “当たり前(暗黙知)” が少しずつ言葉として蓄積されていく(形式知化)。
AIはコンテクストを把握しないと意図した通り動かない。それを理解した上で、暗黙知はAIと一緒に整理する。
これだけで、「AIを使いこなす」ことにぐっと近づくと思う。